図録 大津絵の世界 仏画 鬼図 富岡鉄斎 竹内栖鳳 円山応挙 池大雅

2006年発行 全128ページ
　ユーモアと風刺のキャラクター 大津市歴史博物館

■本書序文■
大津絵は、江戸時代初めの頃(寛永年間あたりからと考えられる)から描きはじめら れ、
江戸時代を通じて大津を代表する名産でした。
はじめ仏画を中心に描いていたようですが、早い時期か ら世俗画も描くようになります。
その人気は、一目見ただけで思わず興味をそそられる鬼の念仏や藤娘など のユニークな絵柄と、
近松門左衛門の浄瑠璃『傾城反魂香』に「三銭五銭の商い...」と謳われるような安価 な値段にあったのでしょう。

大津絵に描かれた様々な絵柄は、人の世の教訓を説く一方で、生真面目になりすぎず、
滑稽味あふれた描 きぶりで人々を惹きつけました。
江戸時代の人々の気質がそのまま伝わってくるような、屈託のない自由奔 放な筆づかいは、
親しみやすい味わいを持ち、現在も多くの大津絵ファンを持っています。

また浄瑠璃『傾城反魂香』の影響から、歌舞伎や日本舞踊などにも大津絵の主人公が
舞い踊るものが生ま れ、こうした歌舞伎役者を描いた浮世絵も描かれました。
幕末に大流行した「大津絵節」も、大津絵の滑稽 味から唄いはじめたものが、様々な替え歌を生み、流行歌となったものです。
このように大津絵は、江戸時 代の芸能にも影響を与えました。

追分付近にあった大津絵の店は、明治時代になって鉄道が開通し、人々の姿が往来から消えるとともに、 その役割を終えます。
しかしその後、大津絵の良さが再評価され、大津の名品として復権させるための様々 な努力がはらわれました。
その結果、現在も大津市のシンボルとして大津絵は生きているのです。
「今回の展覧会では、初公開作品を多数含む、江戸時代の大津絵をはじめ、
大津絵の歴史やその展開を伝え る資料、また大津絵が再評価される中で公刊された大津絵研究書など、大津絵の足跡を幅広く紹介します。

状態：中古　概ね良好

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